ちょっと博士っぽく
さて、何を隠そう、別に隠してもいないが、僕は一応、研究者である。
Ph.D.、いわゆる博士号ってやつも取得している。
子供やかわいい女の子たちから「はかせー、はかせー」と囲まれる理想の生活は死ぬまでくることもないけれど、それなりに誇りに思っている。
研究者といえどいろんな分野の人がいるので自分は自分が経験したことしかわからない。けど、おおよそ間違っていないと思うことは、基礎研究、科学の進歩というやつと倫理というものは大抵相反する。
ブラックジャックによろしくにも書いてあったけど、誰もが認める医学だって基本的に死という自然の流れに反する学問ともいえるわけだから。
僕の研究の大きな目的と一つとして、ある病原体を媒介する蚊をその現場から殲滅させるというものがある。
実際にブラジルでは既に1000万匹の感染を防ぐようにした遺伝子組み換え蚊が野に放たれていたらしい。
さて、ここでこれを読んでいる人がいたらどう思っただろうか。
おそらく大まかに分けて意見は2つ。
1. なるほど。そんな技術が。蚊をいじったり、なくせば病気もなくなるわけか。
2. 生態系とか崩れないの?倫理的にどうなの?
で、最初の話に戻るのだけれど、この2つの答えは基本的にベクトルが反対を向いている。事実、自分がどんなにこれはきた!というアイデアを思いついても、倫理的にこれ実際いいのか?というところにいつもぶつかる。しかし、すぐまた思うのがといっても基礎研究の段階だからそれほど深く悩まず、発想の新しさを売りにしようということ。
これが基礎研究者の発想である。
最初から生態系や倫理的なことばかりを気にして可能性を省いては、正直新しい発見をする可能性は急激に低くなると思う。
まあブラジルの話は正直、自分も
ええーー??
これが率直な自分の感想だったけど。。。
正直に言って、これが正しいことなのかはちょっと自分にはわからない。ただひとつ明確なのはこういう蚊を改変して野に放つとか、全滅させるということに大きく反対する人たちもいるということ。
生態系への影響だとかその辺の知識は僕は今さほど持ち合わせていないのでなんともいえないけれど、自分のスタンスは基本、人間中心、人間のため。もちろん方法は考えるけれど。
最後に付け足すと、WHOによれば
2010年におけるマラリアの推定罹患者数は2億1600万人。死者数は65.5万人。
デングウイルス感染においては、毎年推定5000万から1億人が感染、50万人が重篤な症状になり、うち2.5%の人が死に至るとされている(ワクチン・治療法ともになし)。
そして、これらの病原体もまた、地球上に存在するひとつの生命体である。