思いつきの、走り書き

アメリカの田舎から特にアメリカらしくないことを中心に。

ノーベル賞は狙えるか -意義のある研究?-

iPS関連の話題は日本では未だ絶えないようですね。悪いのも含めて。。。

 

今回の山中先生のノーベル医学生理学賞の受賞。

正直言うと、初めて聞いた時は、「早くない?」という印象でした。

 

なぜかといえば、山中先生自身の姿が若いことからもわかるように2006年の発見からたった6年しか経っていないのです。もちろん時間がたちゃあいいわけではないですが、時間が経つということはその発見がどの程度世の中へのインパクトがあるかが様々な形で試されるということ。これまでの受賞を見渡してみれば、発見された時代におけるその研究自体の一般社会へのインパクトはそれほど大きくなく、その後様々な応用がなされて世に広まったり、病原体なんかだとその後爆発的な感染の広がりを見せたりといったケースがほとんどだと思います。

 

iPS細胞に関しては、もちろん再生医療や創薬の分野において大きな可能性を示し、ES細胞における最大の問題である倫理面をクリアしたといえます。しかし、まだ一般社会に認知されるほどの確固たる実績がないのです(臨床応用をしたというとんでも発言もありましたが。。。)。この実績こそが医学や生物学分野におけるノーベル賞を受賞する上で最も重要で困難なポイントであると僕は捉えています。

 

ただ、ここで日本人が、というか日本のメディアが陥りがちな点は(こういうサイエンスに関する全体的な理解の低さが、ああいう日本の主流の新聞社がとんでも発言を信じてしまう自体を引き起こすと思いますが)今回の受賞にはもう一人の受賞者がいて、その発見ありきだということを忘れがちなことです。

 

John B. Gurdon博士。彼の発見があったからこその山中先生の受賞だと思います。もちろん山中先生自身もGurdon博士のことは非常に尊敬しているそうですし。

 

Gurdon博士の行ったこと、それはオタマジャクシから核を取り出し、それを卵に移し替えることで、クローンカエル、クローン生物を世界で初めて作り出したということです。しかも1958年まで遡ります。この発見は当時、一旦、成熟し、特異的な機能をもった細胞はもう他の機能を持つ細胞にはなれないという教科書の定説を覆す可能性を示しました。また、このクローン技術はその後様々なところで広く使われています。

 

おそらく、Gurdon博士の功績(たぶん年齢もあると思う)、でもちょっとまだ基礎の基礎の範囲をでないなー。お、でもその発見を元にしたiPS細胞が構築されたぞ。さらには先進国における再生医療への大きな期待が合わさって今回の受賞になったと思います。

いうなれば、「細胞のリプログラミング」というテーマでのノーベル賞。

これなら確かに納得という感じがします。

 

山中先生だけの功績では不十分とかそういうことではありません。でもノーベル医学生理学賞というのは世に広まった、他の分野にも大きな影響を及ぼしたという実績がないと受賞は難しいということ、その発見自体の研究としてのインパクトだけでは議論できないものだということです。

 

僕が言いたいのは、ノーベル賞を取ったから素晴らしい研究だったということではなく、素晴らしい研究はほんとにたくさんある中で、結果的にノーベル賞になるものもあればそうでないものもあるということです。だから僕はノーベル賞に関しては、狙ってとるのは難しいと思いますし、ちゃんとした哲学をもつ研究者はノーベル賞のために研究もしてないと思います。

 

研究というのはすべてはつながっています。人生と同じでどこで何がどうつながるかなんてわからない。だから必要のない研究なんてないんです(一部例外を除いて)。その中で一般社会にも解りやすいものもあれば、そうでないものもある。で、一般的に"解りやすい"ものが"意義のある研究"とされます。一見それが何の役に立つの?ってこともたくさんあります。ただ、そういう類いの研究から非常に重要なことが見つかり、様々な形で応用もされています。だから、止めてはいけないんです。今以上の技術、医療を求めるのであれば。こういったことを日本政府にも理解してもらった上で、どういう道を選ぶのかを判断してほしい。というか、自分たちが決めて、偉い人達を選ぶようにならなければいけないのですが。

 

というのが、僕個人の意見です。少々熱く、まじめになりすぎましたね(笑)

うまく伝えられたかわかりませんが、色々な場所で研究というものに頭まで浸かってきてやはり特別な思いはあります。ここには書ききれないくらい。ちょっとでも誰かにわかってもらえたらそれはとても嬉しく思います。

 

というわけで、次あたりからまた料理の写真でもアップしようかな(笑)

ではでは。