思いつきの、走り書き

アメリカの田舎から特にアメリカらしくないことを中心に。

quatre septembre

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"平均するとね、一人の人間は一生に五回炊飯器を変えるという統計があるんだって"

 九月の四分の一 大崎善生

 

年末年始にマンハッタンに行ったときにブックオフで何冊か日本の本を買ってきた。新しいもの、昔読んで好きだったもの。

 

以前も書いたような気がするけど、個人的に好きな作家といえばやはり大崎善生。軽快なストーリー展開を楽しむというよりは、文章自体の味わいや訴えているメッセージを楽しむタイプ。どちらかといえば重たく、悲しい話が多い気がするので好みは分かれそう。

 

"僕が気づくかどうか、その偶然に委ねたのだ。自分で何かを決めることも、僕に何かを決めさせることも怖かった。だから、小さな偶然に託したのだ。"

 

色々な小説を読んだ中で、鮮明に覚えている数少ない場面です。

 

大事な決断を偶然に委ねる。

これ、というときは偶然に委ねたことはないけれど、小さなことも含めればそういう気持ちも解るし、実際自分も似たような経験はあります。

場合によっては、根拠のある自分の意志や他人の助言よりも、何の根拠もない些細な肯定的偶然の方が強く後押しをしてくれることさえある。考えてみれば不思議なものです。こういった場合は、強い意志が偶然の捉え方を変えているということも含むのでしょうが、それよりもみんなどこかで運命とかそういう類のものを信じていたいのかもしれませんね。そしてそれはきっと悪くない。

 

"しかし、残像であるがゆえに、より鮮明に心に投射し続けるということもある。残されたビルよりも、壊されたビルをより強く思うように"