思いつきの、走り書き

アメリカの田舎から特にアメリカらしくないことを中心に。

iPSとワンルーム

山中伸弥先生がノーベル医学生理学賞を受賞されましたね。

本当に素晴らしいです。

 

とうわけで、料理だけじゃなく、たまにはこういうサイエンスのことも書いてみたいと思います。

 

日本の主なメディアがどの程度取り上げて、どの程度までちゃんと説明してるかわかりませんが、一応ここでもさらっと、かなり砕いて書いてみます。

 

再生医療。

端的に言えば、もうダメだ。。。というくらいに悪くなってしまった体の一部を新しいものと取り替えてしまえばいいじゃないというのことを目指している医療。

 

ではどこから新しいものを持ってこようか?

他の人から?これは臓器移植という言葉でもよく知られている手段ですが、ドナー不足や拒絶反応がやはり問題となっているようです。

 

じゃあ、作ってしまおう。

しかし、、、

60兆もの細胞(生命が生命足りうる一式を備えた最も小さい部屋のようなもの、巨大マンションの中の生活はやっていける家財道具一式を備えたワンルームみたいな存在?)から構成されている我々の体ですが、そのほとんどはもうそれぞれの役割を果たすため違う細胞になっています。要は、髪、爪、皮膚、血液の中の細胞はイメージだけでもかなり違いますよね。そのそれぞれの細胞への変化を分化といいます。そして、その分化してしまった細胞はもう他の細胞にはなれないのです。せっかくモダンナチュラルで統一した部屋を、突然、和風にしてよって言われても、いや無理無理ってことです。

 

つまり、もう和風には戻れない。もとい、皮膚から心臓は作ることができない。

 

でも、僕らは元々、受精卵から時間をかけてここまで大きく様々な形・機能を持つようになったわけなので、そのポテンシャルは持っているはず。空っぽだった部屋はモダンにも北欧風にもなることができます。そのポテンシャルを持っている特別な細胞を幹細胞といいます。

 

そこで、登場したのがES細胞 (embryonic stem cells)。日本語では胚性幹細胞。2007年にはこちらの発見がノーベル医学生理学賞理由となりました。韓国での捏造事件の方がピンとくるかもしれませんね。

 

ES細胞は、胚(受精卵由来)から出来た幹細胞なのです。受精卵由来なので、どんな細胞にもなることが出来る機能を持っています。

 

しかし、当時ニュースでも取り上げられたと思いますが、このES細胞を作るということは、ある意味では生命を破壊する行為ともいえます。なので、倫理上問題があるのでは?と未だに議論が続いており、国によってはES細胞の作製を禁止しているところもあります。また、仮にこのES細胞から臓器なりができたとしても、それは自分の細胞からできたものではありません。よって、拒絶反応の懸念も残るわけです。そう、つまりは、、、いや色んな意味でやめておきましょう(笑)

 

そんな最中、山中先生のグループはiPS細胞 (induced pluripotent stem cells)、人工多能性幹細胞(誘導多能性幹細胞、こっちのがいいのでは?)というものを作り出しました。

 

例えば既に皮膚に分化してしまった細胞でも、いくつかの遺伝子をふりかけてやることで、その性質を変え、色んな細胞に分化できるように誘導して作った幹細胞というわけです。

 

ここでお分かりのように、iPS細胞を作製するにはまず受精卵を使う必要はない。なのでES細胞で起きている倫理的な問題はクリア。そして自分の心臓がほしい。そんなときは自分の皮膚から作ればいいじゃない。というわけで、拒絶反応のリスクもかなり低い。

と、再生医療に新たな可能性を示したわけです。

 

これが山中先生のグループが成し遂げた(ノーベル賞のきっかけとなった)業績です。

かなり砕いたつもりですが、伝わったでしょうか。アパートのくだりがない方が実はわかりやすかったんじゃないかという気がしてなりません(笑)

 

さらに可能性をいえば、治療薬の開発にも貢献するのではと考えられています。

薬が効くかどうかを試すにはもちろん患者さんで試すのが一番なわけですが、そうもいきません。そこで、患者からの細胞からiPS細胞を作り、その疾患部位に近いものに分化させることで薬効を試す場を作り出せる可能性があるということです。

こういうことも加味されて選ばれたのでしょう。

 

色々書こうと思ったことはあるけれど、思ったより長くなってしまったし、もう夜中なので今日はこの辺で。